臨床的腎機能評価①(MKSAP19)

 

いつもの前置き

はい、セレンです。

昨日から、待望のMKSAPを始めています。

Step2CKと似てるなぁという雰囲気もありつつ

テスト独特の引っ掛けるための悪意がなく、

臨床で、何を重視すべきか?みたいなポイントが凝縮していて非常に面白いです。

 

MKSAP19のPartAというか前半部分が

米国時間8/31にリリースされて

全ての機能は2022/1/31に使用可能になるみたいです。

 

ちなみに現在は

消化器(消化管と肝臓)

総合内科(前半)

感染症

腎臓

神経

腫瘍

の6パートですね…

最初はこのブログでも取り上げようと思ったOncologyからと思ったのですが、解いている段階で、米国と日本の腫瘍診療の違い的な側面を強く感じて、国家試験に悪影響なのでは?と思い至り、まずは
腎臓、神経、消化管、肝臓あたりから行こうかなと…

 

USMLEで体験したように感染症も日本国内でまず見ない疾患も多そうだなぁと予想されるので、国家試験が終わったら楽しみたいかなと…

 

 

本題の腎機能からですね。

Pub Medで調べたり、ハリソンを引いていても、腎臓を考えるうえでAKIとCKDに分けて考えていましたが

MKSAPでは腎機能とは、どう考えるべきかという基礎医学的な側面を理解して考えようという姿勢が非常にいいなと思い

 

共有させてもらいたいなあと思いました。

 

ブログと著作権上の関係でどこまで載せていいか非常に議論が分かれるところもあるなぁと思いつつ

抜粋して書いていこうと思います。

 

参考文献はMKSAP19 Text - Nephrology - Chapter1 Clinical Evaluation of Kidney Funcctionです。

 

気になった方は是非ACPに登録して割引を受けてMKSAPを購入していただければと思います。

(後日MKSAPを割引を受けて買う方法とACP入会とその特典をまとめたいと思います。)

 

⇒9/3まとめてみましたもしよろしければご一読ください

sedoctor.hatenablog.com

 

腎機能については

以前のブログでも紹介していますが

sedoctor.hatenablog.com

腎臓の役割からみた熟知したいポイント

腎臓は大事な臓器だなと思いながらも、膨大で無限のように増え続ける現代の医学を学ぶ上では、

臨床医としては、介入することで患者が得られる恩恵と

介入しないことで患者が被る損害を知りそれらが多いことこそ熟知すべきと考えます。

・腎機能は基本的に回復することはない

・腎機能低下には自覚症状はない

・腎臓は生命活動の重要なポジションを担っており、腎機能が代償できなくなると、電解質、酸塩基平衡が崩れ致死的となり、老廃物が蓄積して全身臓器の状態を悪くする。

・腎機能が代償できるうちは良いができなくなると、介入は腎移植や透析に限られる

・腎機能低下の原因によっては、取り除いたり治療することで、腎機能低下が抑えられる。

 

つまりは 

A:自覚症状がない、早期の段階で腎機能障害を見つける

B:腎機能低下に対して、介入できる原因であるかを精査し治療・介入する

C:荒廃してしまった腎機能に対しては代償療法を提供する

が主に医療者の役割で

Cは透析を専門に行う腎臓内科や腎移植を行う泌尿器科医が専門とする部分が多いですね、基本的にAとBを深く理解して、Cについては専門家にコンサルしつつ。その患者の注意すべきポイントや合併症についてはきちんと見ていきたいと考えますが…

 

臨床的な腎機能について

教科書的には

腎臓には多くの機能があり

①水・電解質の調節
②酸塩基平衡の調節
蛋白質代謝産物の排泄
④ホルモン分泌

とありますが、

実臨床では、Creの上昇≒腎機能障害となっているのではないでしょうか?

おそらく国家試験レベルではそれでよいですし、Creの上昇=腎機能障害とされるのが現場の一般常識なのかなと臨床実習でも感じました。
全身の臓器不全を評価するSOFA scoreでもCreみますからね…

教科書には腎臓は蛋白濾過だけでなく、内分泌や電解質の調整に関わり、貧血や高血圧、電解質異常の鑑別にも腎臓の機能障害は上がりますが、そのほかの原因も関わってくるため、単純に腎臓の機能だけを評価したいとなれば、③の機能いわゆる糸球体濾過量を評価することが多いのかなと思います。

 

一方ではAKIとCKDの診断基準からみると

Creとそれを利用し計算したeGFR

尿蛋白や血尿、尿量の減少という尿の検査

が指標とされていますね…

 

言われてみれば、健康診断で毎回尿検査するのも納得ですよね…
尿所見の異常から腎臓に異常がないかを確認しているのですね…

 

みなさんご存じだと思いますが

Creの上昇は糸球体ろ過を示唆するが、
・Creの上昇があるから、腎臓に問題があるわけではない
・Creの上昇がないから、腎臓に問題がないわけではない

 

ということを改めて理解するいい機会となりました。

 

腎臓も肝臓とともに沈黙の臓器と呼ばれていますが、

自覚症状が基本的にない臓器なんですね…(腎後性で水腎症など起こせば自覚症状が出るでしょうが…)

 

腎機能障害の早期発見

これは、先にも述べましたが

・血液検査の異常

・尿検査の異常

 

から沈黙の臓器とうたわれる腎臓の障害を見つけるわけです。

 

血液検査の異常では

Cre、シスタチンC、BUNが指標になります。

 

Creは最も一般的で臨床医が好んで使う指標なのではないでしょうか?

以前の記事で書いたように、筋肉量や体格に影響されますが

一般的に使われておりよいのかなと

 

前回の記事では触れていませんでしたがMKSAP19のNephrology Q55の問題で

クレアチニンは近位尿細管からも排泄される

・特定の薬剤などは近位尿細管からのクレアチニン排泄を低下させる
⇒特定の薬剤(シメチジン、トリメトプリム、一部の抗HIV薬)を飲んでいる患者で、Cre上昇を見た場合の対応というテーマでした

 

HIV薬使用後1-2週間で0.2-0.3㎎/dlのCre上昇は、糸球体機能の低下でないことが多いと

腎機能低下を考えて投薬など考えるのであれば、シスタチンCなどを測定して本当に腎機能低下があるのか様子を見るべきという問題でした。

 

ここでシスタチンCですが、そもそもなんやねんという話ですが、

あらゆる細胞の核で作られた産物で、腎臓で濾過されることから、Cre同様にGFRを推定するのに使用できます。

同様に年齢や性別は使用しますが、筋肉量の影響を受けにくいことから、小児などでよく使われますが、Creで性格に腎機能を図れるかどうか不安な時に使用するのがよいのかなと思いました。

欠点としては、急性炎症や感染症、悪性腫瘍、甲状腺機能亢進症などで増加するためその点は注意すべきと感じました。

 

MKSAPの問題ではHIV薬内服中患者にシスタチンC測定を考慮するものでしたが、

日本ではHIV患者は地域にもよりますが少ないため見る機会は少ないかなと思いましたが、ステロイド内服などで予防的ST合剤内服中患者のCre上昇を見た際に薬剤性腎障害か、トリメトプリムにともなうGFRに影響しない見かけ上の上昇か調べるためにシスタチンCの測定が有用かもしれないという点は非常に勉強になりました。

 

BUNについてはみなさんもご存じかと思いますが、これも腎臓で濾過される特性があるため、腎機能評価に使用しますよね…

ただ、いまいちなのは、食事(蛋白摂取量)、ステロイド内服、出血、外傷などの異化・同化の影響を強く受けるため評価が難しいですね

BUN/Creは腎前性か腎性かの鑑別に使用できるとされ、国家試験やUSMLEでもとりあえず覚えていた知識ですが、臨床現場では、本当に鑑別するなら、畜尿してFENaを測定すべきらしいです…

BMPbasic metabolic panel)というセットにBUNが含まれることもありスクリーニングで簡単に調べやすいといのが重要なのかもしれません

 

尿検査の異常は、

尿定性(検査紙)尿沈査(顕微鏡)に大きく分かれますね

 

試験紙では

比重:腎臓の濃縮能の評価や脱水の有無など

色調:血尿やポルフィリン症やアルカプトン尿症、一部薬剤など

pH:尿細管の酸廃棄や重炭酸再吸収の機能確認
 ※蛋白質を多く摂取すると尿は酸性に傾く傾向があり、菜食主義者ではアルカリ尿の傾向がある。

潜血:試験紙では、ミオグロビンやヘモグロビンでも反応しうる。陽性の場合は沈査でも評価する必要がある。

蛋白:微量のアルブミン尿は測定できないことやアルカリ尿では偽陽性となる
    リスクの高い患者はスポット尿や畜尿で測定する。

:血糖が180㎎/dlを超えると尿糖が出てくる。血糖がそれほど高くないのに尿糖が出る場合は、SGLT2iの内服を確認してから、近位尿細管での再吸収障害を考える。
妊婦では尿細管の再吸収閾値が変わることで尿糖が出る場合がある。

ケトン:飢餓状態で異化亢進の指標となる。試験紙では、βヒドロキシ酪酸を測定できず、アセト酢酸やアセトンを測定する。DKAで初期に蓄積するβヒドロキシ酪酸は試験紙でとらえられないため、試験紙でケトン陰性でもDKAは否定できない

スルフヒドリル基を持つACEi(カプトプリル)内服でケトンが陽性となる場合がある

白血球エステラーゼと亜硝酸:これらは膿尿、特に尿路感染を示唆する所見で
UTIの事前確率を調べる指標となる

ビリルビン:通常は検出されない、抱合型の水溶性ビリルビン陽性時は重篤な肝疾患や閉塞性黄疸を考える

ウロビリノーゲン:腸で細菌によってビリルビン代謝され、再吸収されたもののうち一部を再度排泄している。増加する場合は溶血性貧血や、肝疾患、減少する場合は胆汁うっ滞や胆道閉塞の病態を考える。

 

沈査では

赤血球:IsomorphicかDysmorphicを評価する。均一な赤血球であれば、感染症、腫瘤、嚢胞、結石などが考えられる。不均一なDysmorphicな血尿を確認した場合は、糸球体病変の事前確率が上がり腎生検の適応を考える。

白血球:尿路感染で上昇することが多い。尿培養が陰性の場合は、女性なら膣炎や子宮頸管炎、男性なら、前立腺炎などを疑う。そのほかに急性間質性腎炎でも上昇する。中でも好酸球の増多は、間質性腎炎、アテローム塞栓症、糸球体腎炎、微小血管炎、UTI、前立腺疾患、寄生虫感染などが鑑別に上がる。

扁平上皮:15/hpfを超えた場合などは、生殖器からの分泌物などのコンタミを疑う

円柱:ウロモジュリンというTamm-Horsfall蛋白を基質に遠位尿細管内腔で作られるのが円柱で、赤血球円柱は近位尿細管より前で赤血球が存在しないと円柱に組み込まれないため赤血球円柱は糸球体腎炎を示唆する。また白血球円柱は腎盂腎炎などの感染症や間質性腎炎で上昇する。顆粒円柱(muddy brown)は急性尿細管壊死などを示唆する。

結晶感染症、薬剤、代謝疾患、遺伝、薬物などで見られる。リン酸アンモニウムマグネシウム塩はProteus属やKlebsiera属などウレアーゼ産生菌を疑う

 

ですね…

 

長くなりましたので続きは次回に…

尿蛋白と血尿の臨床評価と腎生検の適応についてまとめたいと思います。


AKIのReview読めていないけど基本的な事項はMKSAPの方が勉強になるなと…

もし興味持たれた方はMKSAP19買ってみましょう