関節液について(病態)

 

いつもの前置き

はい、今日は、関節液について考えていきたいなと…

最近卒業試験などその他諸々で毎日更新は難しいけど
少しずつ続けていけたら良いなと思います

 

関節液とは?

まずは定義ですが、

Synovial fluid (SF) is the viscous liquid in the synovial cavity and is secreted by the synovial membrane. Its function is to reduce friction between the articular cartilages of the synovial joint during movement. 

Biochemistry of Collagens, Laminins and Elastin, 2016

でSynovial fluid 滑液とも言いますよね

ご存じの通り
関節運動における摩擦を和らげる役割ですね

 

眼房水の流れや、髄液の吸収などはキチンと国家試験などで意識的に教えているけれど、関節液てきちんと学習していないと感じて調べてみました。

 

要するには、関節液は滑膜が産生し、滑膜で吸収されることが基礎知識として病態や診断を考えるうえでベースにしたい知識ですね。

 

臨床における関節液

関節液について考えるのは、おそらく、単関節炎などで、関節が腫脹している時に穿刺して、関節液の性状を評価したりすのではないでしょうか?

関節液(滑液)が減少すると、間接運動時の疼痛など起こりそうですが、関節液の評価というのは難しいと思います。

やはり、張れている、増加しているというのが臨床的に問題になる気がします

いろんな関節の腫脹がありますが、中でも関節液の貯留を最も評価しやすいのは、膝じゃないでしょうか?

関節腔が広く、外部観察しやすく、膝蓋骨が浮動するという特徴から最も評価しやすいなと思います。

 

関節液貯留 関節水腫をみたら

膝が腫れている、膝蓋骨の浮動など液体貯留を見た際には、滑膜が増殖ないし、炎症を起こす疾患が背景にあるのでは?と考えます

凡その鑑別疾患は

・変形性膝関節症

・過剰なトレーニングなど

・結晶誘発性関節炎

・関節リウマチや自己免疫疾患や結合組織関連疾患

・化膿性関節炎

 

急性 or 慢性
多関節 or 単関節 
で鑑別は変わると思います

 

Baker’s cyst

いきなり話が飛びましたが
いわゆる膝窩嚢胞についてです

これを考えるうえで、滑液の話してきました

 

この疾患は膝窩、膝の裏面に水が溜まる疾患ですね

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チェックバルブが膝の関節に形成されて、半腱様筋と腓腹筋の滑液包が拡大する病態です。

 

ソース画像を表示

 

Baker cystは膝の屈曲制限など運動的な問題や神経の圧迫、嚢胞の感染などが問題となります。

また、破裂することが、あり、破裂すると、たまった関節液が、下腿にたまり、腫脹し筋肉を圧迫することでいわゆるコンパートメント症候群のような病態を引き起こして疼痛をきたし、深部静脈血栓症の鑑別疾患としても考えられます(頻度は稀ですが)



なぜBaker's cystの話なのか?

これは、以前私が救急の現場で交通外傷で下肢痛を訴える患者さんの相手をしていた時に、膝窩の嚢胞を触れて、片側優位の下腿の腫脹を見て、救急車で患者さんに、膝が悪くて整形外科に通院していないか?関節の水を抜いてもらったことはないですか?と確認しました。

すると、整形外科の先生に膝を診てもらっていると返答があり
間違いないこれは、Baker嚢胞破裂だと思っていました。

 

救外のエコーで膝窩嚢胞が見つかり、矛盾はしないという結論を得て自己満足に浸っていたのですが、後日、指導医の先生から

『あの患者さん変形性膝関節症で通院していてBaker嚢胞で通院していたわけではないよ』ということを教えてもらい、もやもやしていたのです…

 

Baker嚢胞は膝の裏に水が溜まる病気で、それ自体が診断だと思っていましたが、病態的に関節液が増加する背景とチェックバルブが存在して生じうる疾患と理解すれば、

Baker嚢胞をみたら、ただ、関節液を抜いたり対象療法を行うのではなく、

滑膜を何か侵す疾患
特にRAやOAを疑いX線の評価や炎症の評価、また半月板損傷を疑い身体診察
必要に応じて抜いた関節液の検査なども行いたいと思います。

 

Take Home Message

関節液が溜まる=滑膜に何かしらの問題がある

Baker嚢胞は滑膜の問題+チェックバルブの形成

Baker嚢胞をみたら診断に満足せず、背景を考える