関節液について(病態)

 

いつもの前置き

はい、今日は、関節液について考えていきたいなと…

最近卒業試験などその他諸々で毎日更新は難しいけど
少しずつ続けていけたら良いなと思います

 

関節液とは?

まずは定義ですが、

Synovial fluid (SF) is the viscous liquid in the synovial cavity and is secreted by the synovial membrane. Its function is to reduce friction between the articular cartilages of the synovial joint during movement. 

Biochemistry of Collagens, Laminins and Elastin, 2016

でSynovial fluid 滑液とも言いますよね

ご存じの通り
関節運動における摩擦を和らげる役割ですね

 

眼房水の流れや、髄液の吸収などはキチンと国家試験などで意識的に教えているけれど、関節液てきちんと学習していないと感じて調べてみました。

 

要するには、関節液は滑膜が産生し、滑膜で吸収されることが基礎知識として病態や診断を考えるうえでベースにしたい知識ですね。

 

臨床における関節液

関節液について考えるのは、おそらく、単関節炎などで、関節が腫脹している時に穿刺して、関節液の性状を評価したりすのではないでしょうか?

関節液(滑液)が減少すると、間接運動時の疼痛など起こりそうですが、関節液の評価というのは難しいと思います。

やはり、張れている、増加しているというのが臨床的に問題になる気がします

いろんな関節の腫脹がありますが、中でも関節液の貯留を最も評価しやすいのは、膝じゃないでしょうか?

関節腔が広く、外部観察しやすく、膝蓋骨が浮動するという特徴から最も評価しやすいなと思います。

 

関節液貯留 関節水腫をみたら

膝が腫れている、膝蓋骨の浮動など液体貯留を見た際には、滑膜が増殖ないし、炎症を起こす疾患が背景にあるのでは?と考えます

凡その鑑別疾患は

・変形性膝関節症

・過剰なトレーニングなど

・結晶誘発性関節炎

・関節リウマチや自己免疫疾患や結合組織関連疾患

・化膿性関節炎

 

急性 or 慢性
多関節 or 単関節 
で鑑別は変わると思います

 

Baker’s cyst

いきなり話が飛びましたが
いわゆる膝窩嚢胞についてです

これを考えるうえで、滑液の話してきました

 

この疾患は膝窩、膝の裏面に水が溜まる疾患ですね

f:id:sedoctor:20210921124044p:plain

チェックバルブが膝の関節に形成されて、半腱様筋と腓腹筋の滑液包が拡大する病態です。

 

ソース画像を表示

 

Baker cystは膝の屈曲制限など運動的な問題や神経の圧迫、嚢胞の感染などが問題となります。

また、破裂することが、あり、破裂すると、たまった関節液が、下腿にたまり、腫脹し筋肉を圧迫することでいわゆるコンパートメント症候群のような病態を引き起こして疼痛をきたし、深部静脈血栓症の鑑別疾患としても考えられます(頻度は稀ですが)



なぜBaker's cystの話なのか?

これは、以前私が救急の現場で交通外傷で下肢痛を訴える患者さんの相手をしていた時に、膝窩の嚢胞を触れて、片側優位の下腿の腫脹を見て、救急車で患者さんに、膝が悪くて整形外科に通院していないか?関節の水を抜いてもらったことはないですか?と確認しました。

すると、整形外科の先生に膝を診てもらっていると返答があり
間違いないこれは、Baker嚢胞破裂だと思っていました。

 

救外のエコーで膝窩嚢胞が見つかり、矛盾はしないという結論を得て自己満足に浸っていたのですが、後日、指導医の先生から

『あの患者さん変形性膝関節症で通院していてBaker嚢胞で通院していたわけではないよ』ということを教えてもらい、もやもやしていたのです…

 

Baker嚢胞は膝の裏に水が溜まる病気で、それ自体が診断だと思っていましたが、病態的に関節液が増加する背景とチェックバルブが存在して生じうる疾患と理解すれば、

Baker嚢胞をみたら、ただ、関節液を抜いたり対象療法を行うのではなく、

滑膜を何か侵す疾患
特にRAやOAを疑いX線の評価や炎症の評価、また半月板損傷を疑い身体診察
必要に応じて抜いた関節液の検査なども行いたいと思います。

 

Take Home Message

関節液が溜まる=滑膜に何かしらの問題がある

Baker嚢胞は滑膜の問題+チェックバルブの形成

Baker嚢胞をみたら診断に満足せず、背景を考える

 

 

Parkinson病 (MKSAPまとめ)

 

お久しぶりです。
マッチング試験や卒業試験その他諸々忙しくてなかなか更新できていませんでした。
MKSAPを医学生で解く勉強会に興味を持ってくれた心強い同級生たちと楽しく勉強しています。

勉強会の運営だったり、どういう方式がいいのかなど模索中ですが、将来こういう仲間たちと仕事ができたら熱いなと思いつつ勉強しています。

 

久しぶりの記事ですが

勉強会の準備で作ったスライドをどうせだし記事にしてしまえという手抜きですね(笑)

 

もしよかったらどうぞ

f:id:sedoctor:20210919130032p:plain

 

Parkinson病の診断

f:id:sedoctor:20210919125246p:plain

f:id:sedoctor:20210919125406p:plain

f:id:sedoctor:20210919125443p:plain

 

初期治療

f:id:sedoctor:20210919125544p:plain

f:id:sedoctor:20210919125618p:plain

f:id:sedoctor:20210919125640p:plain

f:id:sedoctor:20210919125706p:plain

f:id:sedoctor:20210919125732p:plain

f:id:sedoctor:20210919125754p:plain

 

長期的な管理

f:id:sedoctor:20210919125854p:plain

f:id:sedoctor:20210919125908p:plain

f:id:sedoctor:20210919125917p:plain

f:id:sedoctor:20210919125924p:plain

f:id:sedoctor:20210919125935p:plain

f:id:sedoctor:20210919125954p:plain

f:id:sedoctor:20210919130018p:plain

 

細胞の種類と分類 (基礎医学)

いつもの前置き

はい、セレンです。

マッチング試験もいよいよ大詰めですね
もうすぐ希望順位付け始まると思うとなんか緊張しますね…
あれだけ初期研修選びの記事を書いているのに、どこを第一で出すかいろいろ悩んでいる最中です。

はい、いろんなシリーズを作りかけて放置していたりしますが、
臨床推論を下地から力を上げるには、
解剖学的な知識+組織学(細胞の種類や働き)について精通することが重要なのかなと考えています。

何故細胞を勉強するか?

・細胞が遺伝子のバグが発生し過剰増殖する悪性腫瘍を深く理解する上で重要
・組織の細胞の特徴をしることで、臓器の特徴機能を精通し、その異常をきたした疾患への理解が深まる

病態を正しく認識することで治療を深く考えることができる。

他にもいろいろあると思いますが、
鑑別のジャンルだったり炎症の波及を考えるうえでも重要なのかなとか色々考えています。

細胞の考え方

細胞をどういう風に分けるかや見るか?というのは非常にたくさんあると思いますが
経験上、病態を考えるうえでは、発生学を意識して
どう分化していったかをかんがえることが重要なんじゃないかと考えます。

 

いわゆる胚葉を意識ですね

 

外胚葉
-外層外胚葉
 表皮、水晶体、内耳、歯、エナメル質、毛と爪、皮膚腺、乳腺、腺下垂体

-神経外胚葉
--神経管
 脳と脊髄、網膜、松果体、神経下垂体

--神経堤
 脳神経、知覚神経節と知覚神経、副腎髄質、色素細胞

 

中胚葉

-沿軸中胚葉
 体幹と体肢の骨および骨格筋、真皮、結合組織

-中間中胚葉
 腎臓と尿管、生殖腺と付属組織

-側板中胚葉
 内臓平滑筋、胸膜・心膜・腹膜、心臓・脈管・リンパ系脾臓、血球、リンパ球、副腎皮質

 

内胚葉

-咽頭
 咽頭、耳管、鼓室、甲状腺上皮小体、口蓋扁桃

-原腸
 気管・気管支、肺の上皮、食道・胃・腸管、肝臓、胆嚢、膵臓

-尿膜管
 膀胱、尿道前立腺、膣

 

 

神経堤の細胞は全身の末梢神経を作るために遊走するほか

血球系特に単球は脳でミクログリアと呼ばれ、肝臓でクッパ-細胞と呼ばれ、様々な役割がありますよね…

また、神経と皮膚に症状をきたすことが多い血管内リンパ腫を外胚葉に障害起こすイメージととられる先生もいますね…

神経母斑症も外肺葉系を侵す疾患ですよね

 

臓器や系統別にこの胚葉を意識して役割をメモしながら、
機能と疾患を説明出来たら、検査値との結びつける力や、症候のとらえ方の質が上がるのかなとか考えてます

ではまた

 

Parkinson病 (病態やRiskを中心に)

いつもの前置き

Parkinson病についてまとめてみたいと思います。

というのも神経疾患全般的に苦手意識があったので勉強会を行うこともあり、

勉強会で出し切れない分をこちらに放出しようかなと…

といってもLancetのReviewを流し読みして、DynamedとYoutubeの動画を漁ったくらいですが…

Parkinson病について

病理・病態的な話から
神経の変性疾患で、αシヌクレインという蛋白質神経細胞内に蓄積してしまい、神経細胞の機能低下、細胞死、その他神経系で問題を引き起こす疾患。

高齢者に多く65歳以上では、160人/10万人・年で比較的見る機会の多い疾患

結果、自律神経や中枢神経機能(認知、精神、睡眠、運動調整)に障害をきたします。

主訴としては、安静時振戦(片側に強い)と自律神経症状や嗅覚障害、睡眠時の症状など起こすというのが国家試験では重要でしたが…

 

症状の出現にもパターンがあるようで

f:id:sedoctor:20210910014210p:plain

Kalia LV, et al. Lancet386; 896-912, 2015

運動器症状は初期には出現しないことが典型的みたいですね

Parkinson病らしさは、言われてみれば数年来の便秘体質で、最近気分が落ち込むようになった、配偶者を睡眠中に殴る・寝相が悪くなったというようなエピソードがあって

安静時振戦や固縮、動作緩慢という運動器症状が出現するのは、

Parkinson病と他のParkinsonismを起こす疾患との鑑別で重要みたいで

 

当時割れ問になった111回の国家試験でも

f:id:sedoctor:20210910014900p:plain

予備校界隈では、DATSCANの左右差が重要という話ばかりされた記憶があるが

実は、この問題から学ぶべきは、疾患の経過的に運動器症状よりも前に嗅覚障害や抑うつあったことはParkinson病らしさといえると考える力なのではないかと思います。

 

Parkinson病自体が

自律神経系、精神症状、認知機能、運動器症状と様々に影響して、

様々な病型を取り得ること、

特に運動症状では転倒からの外傷でさらに生活が出うることなど評価していく必要があるんだなぁと感じました。

便秘や尿閉、鬱症状、転倒予防、認知機能評価と考えると、Parkinson病は専門家だけが見る疾患ではなく、今後病院総合医が関わる機会が多い疾患だと感じました。

 

Parkinson病の危険因子

f:id:sedoctor:20210910013536p:plain

Kalia LV, et al. Lancet386; 896-912, 2015

 

 

図に示す通りですが、実は僻地医学部の私は実習で出会ったParkinson病のおばあちゃんを思い出すと、農家で農作業をしていた。タバコもお酒もしないというおばあちゃんだったのは実はリスク因子もりもりなんですね…

 

これで、何が言いたいかというと、神経内科の専門医が多くいる都会よりも神経内科専門医が足りていない田舎でこそParkinson病が多く起こりやすく

老年化社会や過疎地域で、家庭医療的なことをする人こそParkinson病の診療に従事することを求められていくのではないでしょうか?

 

 

診断とセレンディップ

Parkinson病の診断は

 動作緩慢や歩行障害、安静時振戦を見た際に疑う。

 

頭部のCTやMRI検査を最低1回以上行い

運動症状以外の、自律神経症状、感覚症状、精神症状などの評価も行う

 

診断的治療として、運動症状に対してL-Dopaの投与を行い反応性を評価する。

厚生労働省の難病診断基準によると

f:id:sedoctor:20210910021419p:plain

 

甲状腺機能亢進症
TSHやFT3など甲状腺ホルモンも評価するべき

・Wilson病などは鑑別疾患として意識して

酵素などは気にする

・画像検査では正常圧水頭症との鑑別で脳室拡大を評価する必要がある。

・運動症状が強すぎる、転倒がメインでくる場合は進行性格上性麻痺を疑い、垂直性の眼球運動障害や頸部ジストニアを評価

・小脳症状は原則Parkinson病では出現しない、多系統萎縮症を強く疑う

 

 

 

反復する主訴、病態 (臨床推論)

いつもの前置き

はい、セレンです。
今日は毛色を変えて、臨床推論の話をしたいなと思います。
先日の臨床推論の勉強会で直感的な感性を磨くという話で女性の繰り返す腹痛と振戦で輸液を改善する、高乳酸血症という症例でした。

 

この一言だけで、鑑別を想定してみてという話題が振られて何となく、ショックバイタルにならないで、
-乳酸が上がるというヒントから家族性地中海熱?
-でも乳酸上がるんかな?
-ミトコンドリア病とかかな?
-でも、これ反復するんかな? 
-腹痛起こすんかな?

ほかの主訴で拾われるんやないかなとか色々考えていました。

自分よりもレベル高い学生が

ポルフィリア症

・鉛中毒

子宮内膜症

尿素サイクル異常

・腹部片頭痛

・腹部てんかん

などたくさんの鑑別上げているのみて勉強不足だなと反省して
反復する主訴について自分なりに考察してみました。

 

 

反復する主訴を推理してしみる

臨床推論をするうえで
私が臨床推論で尊敬しているS先生は
反復する腹痛といばFMFなどと一発診断を狙いにいき、当てたときは格好いいかもしれませんが、外れたときに、困るのは患者さんだ、鑑別リストにPit fallとしておいておくのは良いと思う。

決め打ちのSystem1はお勉強会や、選択式のテストだけにしなさい

と言われました。(笑)

推理をするうえでの根拠を重視するという考え方に沿えば

 

繰り返す腹痛  
⇒ 家族歴がある。
  イタリア人のハーフで小児期から定期的に体調が悪くなる
⇒ 地中海地域に多い遺伝病で、小児期から繰り返す体調不良 
⇒ 家族性地中海熱(FMF)かな?

 

もし電子カルテのAssessmentに
『〇〇先生の本繰り返す発熱はFMFを疑えとあり、本症例はFMFを疑う』と書いた日には上級医にしばかれそうですね(笑)

System1とSystem2とも違う気がするんですけど
臨床推論の考え方てこれかなと思うんですけど

f:id:sedoctor:20210907213346p:plain


病態を理解することって、主訴から診断にじわりじわりと、もれなく近づけるイメージですね。

f:id:sedoctor:20210907215236p:plain


上級医は蓄積された、System1とピポッドクラスターをふんだんに使い下の図のように、診断近くを瞬時に予測できる力がありますよね…

 

f:id:sedoctor:20210907215357p:plain

厳密にはピポッドクラスター、System1と病態生理やSystem2は並列に同時に使うと思いますし、System1は経験がある程度必要とされるといわれています。

実際System1は早くて診断当ての臨床推論の勉強会では格好よく見えますが…

実は単純暗記でなく、病態や基礎医学の知識など要求されるSystem2的な考えを言語化して、使用できることの方が実は難しいのでは?と感じています。

 

実際、繰り返す腹痛を見たら自己炎症性疾患を疑えというようなパールはあるけれども、

どうやって繰り返しを推理するのか書いてある書籍は少ない気がします。

確かに胸痛や、意識障害などはたくさんありますが、特に慢性期の疾患については少ないのではないでしょうか?
実際は臨床像や患者背景が様々過ぎて、言語化が難しかったり一般化できないことも多々あると思いますが…

 

繰り返すの分類

これ以外にもたくさんあるんだろうなと思いながら

繰り返すということはどういうことか考えながら下の図のように分けてみました。

実際は問診で、どういう風に繰り返すのか?

また誘因となるものはないのか?といろいろ問診して情報を集めるの最重要だと思いますが…

f:id:sedoctor:20210907220911p:plain

 

これらの考え方は、

①単発の発作性が繰り返している 
 特に、神経や血管の病変で、ストレスが外的な誘因で生じる
 時間経過や、随伴症状、身体診察が重要

 

体内で何かが蓄積、排泄されて、生化学的なトラブルを引き起こす

特に代謝系疾患や中毒・離脱に多く、職業などでの暴露、内服、食事、住居、ペット様々な影響を確認

③日内、周期的なリズムのある機能の異常

特に女性の場合は月経など、その他内分泌機能など

 

発作といえば、神経や血管

蓄積といえば、代謝や中毒

周期といえば内分泌と考えることで、問診で具体的に聞きたいことのイメージが付きやすくなりますよね

 

臨床推論 問診のルーチン患 者 背 景 
症 状 解 析 
三 子 
ミ 三 子 
主 を ( 滝 み 遥 の と ま )

ちなみにOSCE対策など含めて、自分なりに問診や臨床推論で考える時にこの項目を聞く習慣をつけるようにしています。

 

いわゆる型的な奴です。

 

何故、これ出してきたんやて話ですが、

さっきの

繰り返しについては症状の時間経過の波をきちんと記載して

増悪、完解因子を抑えて、

生活歴で職業や嗜好品、内服薬などはおおよそ聞くことができます

 

そこからペットや職業で、金属を扱うかどうかなど必要に応じて追加するには

 

病態別にある程度の鑑別疾患を上げておくことがも重要だなと勉強になりました。

 

まずは基本に忠実に患者情報としてルーチンで抑えながら、繰り返しと関連しそうな患者背景に突っ込んで聞き込めるようになりたいなと思いました。

 

臨床推論の勉強会などの後に気が向いたらまたこんな症候論のネタ書きたいなと思います。ではまた

 

 

 

 

蛋白漏出性胃腸症について

 

いつもの前置き

はい、セレンです。

本日の勉強会で、蛋白漏出性胃腸症的な病態が出てきたときに

名前はよく聞くけど

詳しく調べたことねぇ、そいや機能蛋白尿について調べていろいろ書いたなぁと思い返して

 

蛋白漏出性胃腸症について調べてみたので

書いていこうと思います。

 

 

蛋白漏出性胃腸症(PLE)とは

これ、CKにも出てこないですし、MKSAP19にもなかったので今回はDynamedで調べてみました。

てかCKでも見たことないので、これ英訳知らんぞと思い調べたら

Protein Losing Enteropathy (PLE)と名前まんまですね。

 

いかつい名前ですが

 

定義:

血清蛋白質が消化管に過剰に排出され、低蛋白血症とその影響を引き起こすまれな疾患

 

稀なんですねてか、名前通りなんですけど名前が仰々しいですよね…

いっそ分かりにくいので蛋白便と呼びたいですね(笑)

 

蛋白漏出性胃腸症の患者像

・慢性経過の浮腫(最も一般的)

 消化器症状
   下痢や脂肪便
   嘔気
   腹部膨満
   体重減少
   腹水
   肝不全

 栄養失調と成長不良

 胸水貯留など

 

蛋白漏出性胃腸症の病態

これが大事ですね…

3つみたいです。常識なのかなとか思いつつ、知らなかった自分を戒めます

①消化管粘膜の障害

②血管透過性の亢進

③リンパ管機能低下

 

①は当たり前ですよね、クローン病やセリアック病などですね

粘膜の破綻部位から漏出しそうですよね…

 

②血管透過性の亢進、これは炎症やアレルギーみたいですね

代表はSLEやアレルギー性腸炎

 

③リンパ管機能低下、中心静脈圧の亢進が胸管などのリンパの合流部にも負担をかけて、消化管内の毛細リンパ系に影響を当てるのでしょうか。

収縮性心膜炎や心不全、肝硬変の報告があるほか、DynamedではやたらFontan術後にトラブルがあるという記載が目立っておりました。

私も実際に蛋白漏出性胃腸症の患者さんを診たのはFontan手術の既往がある患者さんでした。

 

実はFontan手術名前は聞いたことあるけど小児心臓血管外科に行くつもりないなと

外科のテスト以来きれいに忘れていました…

 

ということでなぜかFontan調べました

 

Fontan手術(フォンタン手術)について大雑把に~先天性心疾患の全体像〜 その3  基本14 - 誰でもわかる先天性心疾患 (inishi124.com)

こちらの方のサイトの図が非常に分かりやすくて拝借させていただきました。

心室が一つしか使えない単心室となる左室低形成などで

グレン手術後にFontanでSVCとIVCがともに肺動脈につながる形になる手術です。

f:id:sedoctor:20210905233511p:plain


Fontan調べる時是非ご覧ください

この方のページでも

CVPが高いことで生じるPLEとその予後の悪さについて分かりやすく記載されております

今後、病院総合医の需要を売り出していく上でトラジションに携わる機会やそれに関心を持つことは重要だと感じていたので改めて勉強できてよかったです。

 

つまり既往歴を確認すると同時に、蛋白漏出性胃腸症疑うのならば心エコーで中心静脈圧を評価して、心不全や肝硬変なども除外する必要があるのだと勉強になりました。

 

 

他の鑑別疾患

蛋白漏出性胃腸症を疑えることは格好いいですが、稀な疾患いわゆるゼブラ的な存在でもあるので、

 

低蛋白血症の場合

蛋白質の産生、摂取の低下

 肝機能障害、栄養失調

②体外への喪失

 ネフローゼ、重症熱傷

 

蛋白漏出性胃腸症も体外への蛋白漏出というくくりに入れてよいでしょうね

 

 

先日書いた、蛋白尿も同じなんですが、

①と②の鑑別を行ううえでは

蛋白質半減期を意識したらいいんじゃないかと思いました

 

蛋白漏出性胃腸症の血液検査では、

半減期の長い血中蛋白の喪失が目立つとありました。

 Am J Gastroenterol. 2010 Jan;105(1):43-9

f:id:sedoctor:20210905235153p:plain

enshin_20_x.pdf (med.or.jp)

臨床と検査-病態へのアプローチ-

というサイトから借りてきましたが

アルブミン半減期長いんだなぁと勉強になりました。

 

慢性的な低蛋白の患者さんで、

ごはんが食べているなら、

肝機能の評価や蛋白尿の有無を確認して

ひょっとしての落とし穴に蛋白漏出性胃腸症を疑って

心エコーやCVP評価できる医師になりたいですね~

 

 

今日はここまでで

読んでいただいたかたありがとうございました。

 

臨床的腎機能評価②(MKSAP19)

 

いつもの前置き

はい、セレンです。今日は勉強会やその他の用事でかなり披露していたのですが、ベッドに入ると眠れないので、前々回の続きの記事を書きたいなと

 

前回は腎機能を見るうえでの生化学検査や尿検査に触れましたが…

もしよければ、こちらもご一読ください

sedoctor.hatenablog.com

 

今回は蛋白尿について勉強したいと思います。

 

尿蛋白

まず、尿蛋白が出たというときに、
尿蛋白あるから腎臓病だとかならないですよね…

何の検査でどういう所見が出たのか!というのが大事ですよね。

 

簡便にスクリーニング的には試験紙を用いた定性反応ですよね

精査には

・24時間畜尿

・スポット尿(随時尿)

の2種類が用いられますね…
24時間畜尿は入院が必要ですし、手間もかかるため多くの場合はスポット尿を利用しているようです。

尿蛋白/尿中Cre

尿中Alb/尿中Cre

のいずれかを評価すべきですね。

CKD分類もeGFRの軸と尿蛋白の軸がありますけど、どちらを評価しているのかも確認すべきだなと
以前述べたように、DM患者では、初期はAlb尿が主体なので、Albが測定できるが、保険の関係で基本は尿蛋白を測定するようです。基準値をきちんと覚えてなかったのですが、

尿中Albの正常下限が30㎎/day 
                 最重症度が300㎎/day

 

尿蛋白の正常下限が150㎎/dayらしいですね

ここごっちゃにしてても国家試験で困らなかったのですが、内科専門医試験に出たという先生の話を思い出して確認しておこうと…

 

で、ここで、
尿蛋白と聞いて、『結局何が漏れているの?』

と考えて、推論できるお医者さん目指したいので考えてみましょう(笑)

尿中のAlbを測定しAlbが漏れていれば分かりますよね…

ここで、さらにさかのぼるわけです。

蛋白質て体を構成しているけど具体的に何?

 

そこで、タンパク質を構造的な特徴や生化学的な特徴で分類するのも一つですが、

臨床的に検査がしやすいかつ、診断に結び付きうることを考えます。

 

蛋白質の大きさです

 

SI Selective Indexを測定してどの大きさの蛋白質が漏出しているかという試験もありますよね…

この図みなさんもご存じですよね

 

f:id:sedoctor:20210905013502p:plain

広島市医師会だより第525号 付録

center201001-10.pdf (med.or.jp)

蛋白の電気泳動の図ですね

尿は糸球体で濾し出されますが、元をたどれば、糸球体で血液をろ過して不要な蛋白質を濾過するわけですよ。

 

糸球体に問題があれば濾過されている血中の蛋白質で最も多い蛋白質であるAlbが漏れ出るはずなんですね

 

漏れ出ている場合に、分子量の多いIgGなども漏れている場合はSIが小さい、重篤な糸球体疾患が考えられるようです。

 

疫学的には、生理的な蛋白尿が最多です

起立時や一過性のストレスで生じる蛋白尿で血中の蛋白分画に似るため、やはりAlbが高いようです。

 

実際,

尿蛋白にAlbが含まれない糸球体疾患は否定的です。

 

血中多いAlbがない蛋白尿は

 

①血中の異常な蛋白の漏出(←これは血中のTpとAlb測定)

②糸球体ろ過後の蛋白質再吸収障害

 

①は多発性骨髄腫など、抗体蛋白質が過剰に産生されて

Bence Jones蛋白などの低分子蛋白が漏出する

 

②近位尿細管の再吸収障害でFanconi症候群や間質性腎炎で尿中のβ2ミクログロブリンが上昇する。

 

尿中Albが陰性で異常な尿蛋白をみたら

蛋白質の分画を意識して、

骨髄腫類縁疾患や、近位尿細管機能異常を疑い

必要に応じて電気泳動をかけて評価してみるがよい

 

と今日は夜も更けてきたのでここまで

読んでいただきありがとうございます