Parkinson病 (病態やRiskを中心に)
いつもの前置き
Parkinson病についてまとめてみたいと思います。
というのも神経疾患全般的に苦手意識があったので勉強会を行うこともあり、
勉強会で出し切れない分をこちらに放出しようかなと…
といってもLancetのReviewを流し読みして、DynamedとYoutubeの動画を漁ったくらいですが…
Parkinson病について
病理・病態的な話から
神経の変性疾患で、αシヌクレインという蛋白質が神経細胞内に蓄積してしまい、神経細胞の機能低下、細胞死、その他神経系で問題を引き起こす疾患。
高齢者に多く65歳以上では、160人/10万人・年で比較的見る機会の多い疾患
結果、自律神経や中枢神経機能(認知、精神、睡眠、運動調整)に障害をきたします。
主訴としては、安静時振戦(片側に強い)と自律神経症状や嗅覚障害、睡眠時の症状など起こすというのが国家試験では重要でしたが…
症状の出現にもパターンがあるようで
Kalia LV, et al. Lancet386; 896-912, 2015
運動器症状は初期には出現しないことが典型的みたいですね
Parkinson病らしさは、言われてみれば数年来の便秘体質で、最近気分が落ち込むようになった、配偶者を睡眠中に殴る・寝相が悪くなったというようなエピソードがあって
安静時振戦や固縮、動作緩慢という運動器症状が出現するのは、
Parkinson病と他のParkinsonismを起こす疾患との鑑別で重要みたいで
当時割れ問になった111回の国家試験でも
予備校界隈では、DATSCANの左右差が重要という話ばかりされた記憶があるが
実は、この問題から学ぶべきは、疾患の経過的に運動器症状よりも前に嗅覚障害や抑うつあったことはParkinson病らしさといえると考える力なのではないかと思います。
Parkinson病自体が
自律神経系、精神症状、認知機能、運動器症状と様々に影響して、
様々な病型を取り得ること、
特に運動症状では転倒からの外傷でさらに生活が出うることなど評価していく必要があるんだなぁと感じました。
便秘や尿閉、鬱症状、転倒予防、認知機能評価と考えると、Parkinson病は専門家だけが見る疾患ではなく、今後病院総合医が関わる機会が多い疾患だと感じました。
Parkinson病の危険因子
Kalia LV, et al. Lancet386; 896-912, 2015
図に示す通りですが、実は僻地医学部の私は実習で出会ったParkinson病のおばあちゃんを思い出すと、農家で農作業をしていた。タバコもお酒もしないというおばあちゃんだったのは実はリスク因子もりもりなんですね…
これで、何が言いたいかというと、神経内科の専門医が多くいる都会よりも神経内科専門医が足りていない田舎でこそParkinson病が多く起こりやすく
老年化社会や過疎地域で、家庭医療的なことをする人こそParkinson病の診療に従事することを求められていくのではないでしょうか?
診断とセレンディップス
Parkinson病の診断は
動作緩慢や歩行障害、安静時振戦を見た際に疑う。
頭部のCTやMRI検査を最低1回以上行い
運動症状以外の、自律神経症状、感覚症状、精神症状などの評価も行う
診断的治療として、運動症状に対してL-Dopaの投与を行い反応性を評価する。
厚生労働省の難病診断基準によると
・甲状腺機能亢進症
TSHやFT3など甲状腺ホルモンも評価するべき
・Wilson病などは鑑別疾患として意識して
肝酵素などは気にする
・画像検査では正常圧水頭症との鑑別で脳室拡大を評価する必要がある。
・運動症状が強すぎる、転倒がメインでくる場合は進行性格上性麻痺を疑い、垂直性の眼球運動障害や頸部ジストニアを評価
・小脳症状は原則Parkinson病では出現しない、多系統萎縮症を強く疑う